いつまでも健康でいたい。これは万人共通の願いではないでしょうか。今日では健康寿命の延伸や健康への意識のニーズの高まりによって人の誕生から死に至るまでありとあらゆる領域が医療の対象とされ、治療の専門化も進んでいます。しかし、人は生きている以上、病気と無縁でいることはできません。具体的な症状があれば医者に相談できますが、健康になる方法は誰も教えてくれません。ではどうすれば健康になれるのでしょうか。
健康の定義はWHO憲章に代表されるように、必ずしも肉体や精神の健康に限定されるものではありません。そして、健康の解釈は社会や文化によっても異なり、多様性があります。ただ、健康について一つ言えるとするならば「病気ではない状態だ」ということです。つまり、健康になるためには、病気とは何かについても深く知る必要があります。
アメリカの精神科医で医療人類学者のクラインマンは、病気の概念を医者が治療対象とする疾患(disease)と患者が経験する物語(病気の意味)としての病い(illness)に分け、「治るとも限らない慢性疾患に苦しむ患者の物語にこそ、病いの本質である多義性が表されている」と指摘しました。つまり、物事の本質を理解するためにはその構造の外に一度出てみることが大切です。
本シリーズでは医学はもちろんのこと人文、アート、医学など様々な領域の著者の「語り」を通して、慢性疾患を中心とした病いの意味と健康の多様性をとらえ直すことを目的に創刊しました。シリーズ名の「クロニック」は、英語で「慢性疾患」を指しますが、「病みつき」「長く続く」というポジティブな意味も持っています。
本シリーズが読者の皆様に末永く愛され、そして、読者の皆様がいつまでも健康でありますように、と願いを込めて。
* WHO憲章前文「健康とは、病気でないとか、弱っていないということだけではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。」
1977年生まれ。アジアの障害のある物乞いを扱ったノンフィクション『物乞う仏陀』でデビュー。その後、国内外の貧困、病気、犯罪など多様なテーマで作品を多数発表。難病の子供のQOLをテーマにした『こどもホスピスの奇跡』で新潮ドキュメント賞を受賞。現代の若者の生きづらさを言葉から見つめた『ルポ 誰が国語力を殺すのか』、特別養子縁組制度を作った菊田昇医師の評伝小説『赤ちゃんをわが子として育てる方を望む』など。
人類学者。専門は文化人類学、医療人類学。2010年早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。早稲田大学文化構想学部助教、国際医療福祉大学大学院准教授を経て2020年より独立。著書に『なぜふつうに食べられないのか―拒食と過食の文化人類学』(春秋社)、『医療者が語る答えなき世界―「いのちの守り人」の人類学』(ちくま新書)、『ダイエット幻想―やせること、愛されること』(ちくまプリマー新書)、共著に『急に具合が悪くなる』(晶文社)がある。
1977年生まれ。アジアの障害のある物乞いを扱ったノンフィクション『物乞う仏陀』でデビュー。その後、国内外の貧困、病気、犯罪など多様なテーマで作品を多数発表。難病の子供のQOLをテーマにした『こどもホスピスの奇跡』で新潮ドキュメント賞を受賞。現代の若者の生きづらさを言葉から見つめた『ルポ 誰が国語力を殺すのか』、特別養子縁組制度を作った菊田昇医師の評伝小説『赤ちゃんをわが子として育てる方を望む』など。
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歌人。1962年北海道生まれ。90年、第一歌集『シンジケート』でデビュー。短歌をはじめとして、エッセイ、評論、絵本、翻訳などを手がける。著書に『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』『ラインマーカーズ』『世界音痴』『にょっ記』『本当はちがうんだ日記』『短歌のガチャポン』『蛸足ノート』など。2008年『短歌の友人』で伊藤整文学賞を受賞。同年、石井陽子とのコラボレーションであるメディアアート作品『火よ、さわれるの』でアルス・エレクトロニカインタラクティブ部門栄誉賞を受賞。17年『鳥肌が』で講談社エッセイ賞、翌年『水中翼船炎上中』で若山牧水賞を受賞。
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社会起業家・ソーシャルデザイナー。1988年生まれ。東日本大震災をきっかけとして福島県における県外避難者向けの情報支援事業を責任担当。2013年「防災をアップデートする」をモットーに「一般社団法人防災ガール」を設立、2020年に有機的解散・事業承継済。2018年2月より社会課題解決に特化した企画・PR会社である株式会社morning after cutting my hair創設。2020年「インクルーシブデザイン」を基軸としたデザイン・開発を行うSOLIT株式会社を創設。
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1980年、東京都生まれ。写真家として第43回伊奈信男賞、19年度日本写真協会賞新人賞受賞。写真集に『やっぱ月帰るわ、私。』『理想の猫じゃない』『ふあふあの隙間』。また著書には『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』(大宅壮一ノンフィクション賞、講談社本田靖春ノンフィクション賞にノミネート)、『「死刑になりたくて人を殺しました」無差別殺傷犯の論理』『私の顔は誰も知らない』などがある。
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1979年、熊本生まれ。医師。東京大学医学部付属病院循環器内科助教を経て、2020年4月より軽井沢へ移住。現在は軽井沢病院院長・総合診療科医長、信州大学社会基盤研究所特任准教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員、東北芸術工科大学客員教授に就任。「山形ビエンナーレ2020、2022」では芸術監督も務める。医療の多様性と調和への土壌づくりのため、西洋医学だけではなく伝統医療、補完代替医療、民間医療も広く修める。芸術、音楽、伝統芸能、民俗学、農業など、あらゆる分野との接点を探る対話を積極的に行う。共著に『見えないものに、耳をすます』(アノニマ・スタジオ)、著書に『いのちは のちの いのちへ ― 新しい医療のかたち―』(アノニマ・スタジオ)、『ころころするからだ』(春秋社)、『からだとこころの健康学』(NHK出版)、『いのちの居場所』(扶桑社)、『ことばのくすり』(大和書房) など。www.toshiroinaba.com
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1977年、フランス・パリ生まれ。ロンドン育ち、東京大学中退。ミュージシャン、ラッパー。吉田正樹事務所所属。2010年に脳梗塞で倒れ、合併症で左目を失明。以後は眼帯がトレードマークに。バンド、ベーソンズのボーカル。オリジナル眼帯ブランドO.G.Kを手がけ、自身のYouTubeチャンネルから宮台真司、神保哲生、プチ鹿島、町山智浩らを迎えたトーク番組を配信している。著書『武器としてのヒップホップ』(幻冬舎『) MCバトル史から読み解く日本語ラップ入門』(KADOKAWA)など。2023年、映画「劇場版センキョナンデス」「シン・ちむどんどん」(プチ鹿島と共同監督)公開。