[1.気管支喘息]![]() ![]() |
3.治療薬の将来展望
アレルギー治療薬については,アレルギー性炎症制御を目的として新たなアプローチが進められている(表5)21)。この中で開発が最も進んでいるのがモノクローナル抗体であり,抗IgE抗体についてはわが国での治験が近日中に開始される予定である。 |
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1. ヒト型モノクローナル抗体
ヒト型モノクローナル抗体として,まずはIgE Fc鎖を認識する抗IgE抗体(E-25)がある。アメリカでの気管支喘息を対象とした治験 22)では,高用量で臨床症状を改善させ,経口・吸入ステロイド薬を減量させることができたという。IgE抗体依存性反応が主役をなすアトピー型気管支喘息やアレルギー性鼻炎が主たる適応と考えられるが,その治療薬としての正確な位置付けには今後のさらなる検討が必要であろう。その他,同方向のアプローチとしては,モノクローナル抗CD23抗体,すなわち低親和性IgE受容体(FcεRII)をターゲットにした抗体があり,今後の臨床応用が待たれる。 IL-5は,好酸球の分化増殖,生存延長,局所集積そして活性化に作用する。IL-5制御を目的に,ヒト型モノクローナル抗体の治験ヨーロッパで進められている(SCH55700,SB240563)。両者とも単回投与にて末梢血好酸球数を減少させ,前者については著効例も認められた23)が,後者については遅発型喘息反応や気道過敏性亢進を抑えられなかった24)ともいう。今後複数回投与による治験が行われて,その臨床的有用性の有無が問われることになろう。 |
2. ケモカイン受容体阻害薬
好酸球の局所集積を制御する目的では,好酸球上に発現する接着因子VLA-4に対する拮抗薬や,eotaxinやRANTESなどの好酸球遊走に作用するケモカインが結合する受容体(CCR3)への結合阻害薬が有望であろう25)。 |
3. ペプチド療法
Th2細胞機能制御を目的とするとき,その原点となるのが免疫(減感作)療法である。その作用機序はTh2/Th1アンバランスの是正が主たるものと考えられており26),その延長線上でペプチド療法が開発された。 IgE抗体とは反応せずT細胞無応答性を誘導することを目的に,ネコ主要アレルゲンFel d 1由来ペプチドが臨床治験に供された。そのIPC1/2はある程度の臨床効果は認められたものの27),アミノ酸数が多かったためか喘息発作の誘発が生じて開発は中止された。しかし別のペプチドについては,遅発型喘息反応をIgE非依存性に生じさせるものの,その後無応答性を誘導させると報告28)されており,今後臨床での検討がなされるものと考えられる。その他ダニDer 1や,スギCry j 1に由来するペプチドなどの検討が進められているという。 |
4. DNAワクチン
アレルゲンに対するTh1免疫応答を積極的に誘導するアプローチとしてDNAワクチンがある。主要アレルゲンのDNAをプラスミドに組み込む,あるいはCpGモチーフを用いて投与するものであり,いまだ研究室レベルではあるが,IgE産生抑制作用,好酸球浸潤抑制作用などが報告29)されており,今後の展開が期待される。 |
5. 転写因子阻害薬
Th2サイトカインの制御については,転写因子阻害薬が今後注目されよう。その際IL-4に特異的なシグナル伝達因子STAT-6や,Th2分化因子GATA-3などがターゲットと考えられ,動物モデルでの有用性が報告されている30)。遺伝子レベルでの手法としてはantisense oligonucleotideなどが想定されるが,いかに局所へdeliveryするかが課題となろう。 |
おわりに
以上,気管支喘息と花粉症を中心にアレルギー疾患臨床研究の動向を述べた。現在用いられている局所ステロイド薬や抗アレルギー薬に加えて,モノクローナル抗体などの新規治療薬が投与可能となれば,発症予防も含めた新たな展開も期待できよう。 |