I.高脂血症の治療/II.抗血小板薬/III.アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACDI)
/IV.βブロッカー/V.Ca拮抗薬//VI.硝酸薬/VII.我が国の大規模臨床研究/おわりに
欧米では大規模臨床試験が多数行われ,その結果に基づいた治療指針が示されているが,わが国では独自のエビデンスが少なく欧米のガイドラインを参考しているのが現状である。食習慣をはじめとする生活習慣や人種差があり,欧米のガイドラインをすべて適用するには問題があると思われる。 現在,わが国においてもいくつかの臨床試験が行われ,その一部について概略を示す。 1. J-LIT (Japan Lipid Intervention Trial) 総コレステロール値220mg/dL以上の高脂血症患者52,421(35~70歳)例を対象に1993年から6年間シンバスタチンを投与(5~10mg/日)し,血清脂質の状況および虚血性心疾患の発症頻度を検討したもので,LDL-Cと心血管イベントの間に正相関を認めた。 2. PATE(Pravastatin Anti-Atherosclerosis Trial in the Elderly Study) 60歳以上の総コレステロール値220~280mg/dLの高脂血症患者665例にプラバスタチンを平均3.9年投与し,虚血性心疾患・脳血管疾患・末梢血管疾患などの発症率を検討したものである。プラバスタチンは5mg/日の群と10~20mg/日の群に分けられた。コレステロール低下率はおのおの11~13%,15~17%であったが,心血管イベントは後者にて有意に低かった。 3. Mega Study 総コレステロール値220~270mg/dLの8214例の高脂血症患者(40~70歳)を食事療法と食事療法+プラバスタチン(10~20mg/dL)に振り分け,現在経過観察中である。予定治療期間は5年間である。登録者内容は女性68%,糖尿病19.7%,高血圧41.6%と女性が多いのが特徴である。 4. JAMIS-1, JAMIS-2(the Japanese Antiplatelets Myocardial Infarction Study) アスピリン81mgを1日2錠服用する群と隔日1錠服用する群では心筋梗塞後の心事故発生率に差はないと報告しており,また,心筋梗塞後の心事故に及ぼすアスピリン1日81mgおよびトラピジル1日300 mgの効果についてはアスピリンにて有意に心事故発生率を減少させることが報告された。 5. J-MIC(B)(Japan-Multicenter Investigation for Cardiovascular Drugs/Therapies) 虚血性心疾患を合併した本態性高血圧患者のnifedipine持効錠の長期予後に及ぼす効果をACEIを対照にして3年間追跡したものである。現在,終了しており解析中であるが,2年間の観察では両群に差はないと報告されている。 以上,虚血性心疾患における最近の,特に薬剤臨床試験の動向について概説した。大規模臨床試験により多くのエビデンスが得られ,それらをもとに診療ガイドラインが作成されているが,今後も多くの大規模臨床試験により新たなエビデンスが得られることを期待したい。 |